
現場条件が、9月に私が崖から転落した現場と似ていると感じ、他人事とは思えませんでした。その詳細はこちら↓

林業やっている方は、おそらく何度か運が良かっただけで、たまたま死なずに無傷だったという経験をしてると思う。ぼくの、なんで死ななかったかわかんない事故
※事故の詳細は公表されておらず、原因を断定するものではありません。一般論として整理しています。
・新人・経験の浅い人が安全に働ける現場かを見極める5つの基準
・労災の前に出ていることが多い「前兆」の見つけ方
・レスキュー訓練の中身と、費用の目安
・静岡県東部・神奈川県でもレスキュー訓練は実現できるのか
・事業体と個人が、今日からできる発生予防策
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林業の労災は多い?統計でわかる現状
まず、数字で林業の労災の現状を確認します。死亡災害は年30人前後、全産業の約4%を占める
令和7年(2025年)の林業の死亡者数は25人で、前年の31人から6人減りました。休業4日以上の死傷者数は1,063人(前年1,167人)です。
全産業では、死亡者700人・死傷者135,333人です。
ケガの件数に比べて、命に関わる割合が高いことがわかります。
なお、死傷年千人率は全産業の約10倍と以前、↓こちらで綴っています。

動物駆逐用煙火の暴発で負傷|サル追い払い隊で起きた事故と必須安全装備
死亡災害の約7割が伐木作業中
平成29年〜令和元年の林業死亡災害104件のうち、伐木作業中は70件でした。約7割になります。休業4日以上の傷害事故(3,800件)を起因物別に見ると、チェーンソーが615件、立木等が1,380件です。
経験年数で言えば、経験の浅い人に多いだけでなく、ベテランも例外ではないようです。新人が安全に働ける現場かを見極める5つの基準
見極めのポイントは、経験年数だけではなく、「その日の現場の難易度」と「救援のしやすさ」を見ることです。厚生労働省の「チェーンソーによる伐木等作業の安全ガイドライン」をもとに、2年目の私の考えを加えて整理します。
基準① 事前調査が「書面」で共有されているか
ガイドラインは、作業前に現場を調査し、結果を記録することを求めています。
調査項目は、地形、地質と排水、埋設物や架空線、樹木と下草の状況、緊急時の経路、通信状況などです。
さらに、現場概要・作業方法・伐倒の順序・安全対策を書いた作業計画をつくり、朝礼などで全員に周知すること、作業指揮者を定めることも示されています。
新人にとっては、「今日のどこが危ないか」を朝に説明されるかどうかが、最初の目安になります。
基準② 傾斜と足場:安全な伐倒方向と退避路が取れるか
ガイドラインでは、傾斜地での伐倒方向を、斜面の下方向から見て45〜105度、望ましいのは45〜75度としています。
調査では、傾斜の程度・方向、岩や崩れやすい場所を記録することも要点です。
私の考えでは、次のような場所は新人向けではありません。・落ちたら止まらない崖・谷・岩場が近い
・退避路を斜面の横方向や下方向にしか取れない
基準③ 木の大きさと状態:大径木・かかり木は新人の担当にしない
ガイドラインは、かかり木の処理を経験の少ない人に任せっきりにしないよう求めています。禁止事項の徹底と、2人以上での作業が示されています。禁止事項の例は次のとおりです。
・かかり木に向けてほかの木を伐り倒す
・かかったままの木の元口を切る
・かかり木を肩に担ぐ、または登って枝を切る
私の考えでは、
大径木や、偏心した木、枯れや空洞が疑われる木も、新人は補助に回すべきです。
チェーンソーの操作を覚えることと、大きな木の挙動を読むことは別の技術だからです。
基準④ 周囲との距離と見守り:単独にしない、近づきすぎない
ガイドラインでは、伐倒中は伐倒者以外を、木の高さの2倍の半径の円内に入れないとしています。隣接する木を伐る場合は2.5倍です。退避路の障害物を事前に取り除くこと、伐倒者の合図と退避後に始めることも示されています。
基準⑤ 通信と救助:電波・位置・搬送ルートが決まっているか
ガイドラインの作業計画には、緊急車両のルート、緊急連絡先、携帯電話や無線が通じるエリアを示すことが含まれます。
現場の位置は、GPSの座標などで記録できます。
電波が悪い現場では、「事故後の連絡」だけでなく、「事故前の現場選び」にも影響します。連絡がつかないほど、救助の開始が遅れるからです。
私の考えでは、圏外の現場では、新人を含む作業を避けるか、責任者が視界内にいる配置にするのが現実的です。
チェック表:新人を補助に回すサイン
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| 確認項目 | OKの目安 | 新人を補助に回すサイン |
|---|---|---|
| 事前調査 | 書面に記録し、朝礼で全員に周知 | 口頭のみ、調査記録なし |
| 傾斜・足場 | 伐倒方向と退避路が確保できる | 足場不安定、落ちたら止まらない地形 |
| 木の大きさ・状態 | 通常の木で、大きさも範囲内 | 大径木、かかり木、偏心・枯損の疑い |
| 距離・見守り | 立入禁止範囲を守り、2人以上で作業 | 単独作業、近距離に他の作業者 |
| 通信・救助 | 通信エリア・位置・搬送ルートを確認済み | 圏外、搬送ルートが未確認 |
あくまでも私の考えですが、
「サインが2つ以上重なったら、新人は伐倒ではなく補助」というルールをおすすめします。
「経験の幅」だけでは足りない理由
素材生産と森林整備の両方を経験していても、その日の現場の難易度が高ければ、事故は防ぎきれません。
双方の違いについては別の機会で投稿します
経験の種類や年数と、その日の現場の難易度は別のものです。
さらに、経験が浅いと「これは危ない」と感じても、先輩に言い出しにくいものです。“断ってよいと宣言しておく”ことも、現場の安全策のひとつです。
ちなみにですが、
“断る勇気”については、以前に↓こちらで綴っています。

林業の法規関係を守る意識は異常に甘いでしょ。コンプライアンスなんかは概念すらない。厚生年金かけないのもそうだけど。労働基準法も労働安全衛生法もまるで守らない。
労災の前に「前兆」はなかったか
今回の事故に前兆があったかどうかは、外からはわかりません。ここでは一般論として、「前兆を拾う仕組み」を考えます。
ハインリッヒの法則:重い災害の背後には多くのヒヤリがある
林業の現場にいる人の多くは、「たまたま無傷だった」経験を何度かしているはずです。それこそが「小さな前兆」でした。
私自身の体験は、くどいですが↓こちらの記事で書きました。

林業やっている方は、おそらく何度か運が良かっただけで、たまたま死なずに無傷だったという経験をしてると思う。ぼくの、なんで死ななかったかわかんない事故
新人の現場で見落としやすい前兆
一般論として、次のようなサインは要注意です。・斜面で足を滑らせた、体勢を崩した
・本人が「ちょっと怖かった」と口にした
・練習していない大きさ・地形の仕事を、急に任された
・忙しさで、朝礼や事前確認が省略された
・熟練者の見守りや声かけが減った
「難易度の急上昇」が最大の前兆になりやすい
筆者は、事故前の前兆のうち、特に見落とされやすいのが「難易度の急上昇」だと考えています。
たとえば、緩やかな傾斜や小・中径木で順調にこなしていた人が、急斜面と大径木の現場に一気に入るといったケースです。
難易度を段階的に上げる「育成の順番」があるかどうか。
これが、前兆を見つけるもうひとつの視点です。
事故後の議論は「連絡体制」で止まりやすい
私が聞いた範囲では、
今回の事故後、電波が悪い現場での「事故直後の連絡体制(通信環境)」の整備は話されました。
一方で、発生を防ぐための議論は、事故から2週間以上たった今も進んでいないと聞いています。
連絡体制は、機器や手順で解決しやすいため、合意を取りやすいテーマです。
予防策は、「現場の選び方」「人の配置」「仕事の任せ方」といった日々の判断に踏み込むため、後回しになりがちです。(私の推測です)
だからこそ、事故から一定期間内に、予防を議題にすることをおすすめします。
責めるためではなく、「どの条件が重なったか」を分解するためです。
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宮崎県都城市のレスキュー訓練とは
事故を防ぐ対策と同じくらい、事故が起きたときに「命をつなぐ対策」も重要です。その一例として、宮崎県都城市の訓練を見てみます。
林業の労災を想定した合同訓練
宮崎県と都城森林組合が合同でレスキュー訓練を開催しました。訓練は、林業の作業中に負傷者が出たという想定です。林業の作業中に負傷者が出たとの想定 都城市でレスキュー訓練 https://t.co/KitQ2zxkz1 #MRTニュース #宮崎
— MRTニュース (@mrtnewsnext) October 27, 2026
訓練のポイント:位置を伝える、応急処置、搬送
この訓練で鍵になるのは、次の3点です。・応急処置をして、救助を待つ
・ヘリなどによる救出・搬送の流れを把握しておく
チェーンソーによる深い切創は、大量出血につながるおそれがあるため、通報と応急処置の速さが重要だというのが私の理解です。
具体的な応急手当の方法は、消防や専門機関の講習で学んでください。
宮崎県の事業:3年間で約381万円
宮崎県は、「林業労働災害レスキュー」という事業を、令和6年度から令和8年度まで実施しています。事業費は、合計3,806千円です。
訓練とマニュアルをセットで進めている点も、参考になります。
宮崎だからできた?静岡県東部・神奈川県でもレスキュー訓練はできるか
宮崎では、県と森林組合が合同で訓練を開催しています。財源は林業担い手対策基金で、担当課も決まっています。
神奈川・静岡東部では、事業体が小規模で、主催する「主体」が決まっていないことが壁になると、推測しています。
両県の林業事情は、過去の記事でも書きました。
スズキ王国のもう一つの財産!林業を救え!

東京の水源と緑地を担わされている県の林業は全国の中でも特殊で、水源機能に対する要求が高い
小さく始める方法(筆者の提案)
大きな訓練を待つだけでなく、事業体単位でできることもあります。・119番通報のロールプレイを、朝礼で10分だけ行う
・作業計画に、「届く通信エリア」と「搬送ルート」を必ず記入する
・森林組合や協議会を通して、消防との合同訓練を提案する
・県の林業担当課に、宮崎の事例を共有する
小さな練習でも、事故直後の「最初の5分」を変える可能性があります。
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まとめ:新人を守るために今日からできること
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今回の事故は、個人の技量だけではなく、「現場の選び方」と「人の配置」の問題としても考えるべきだと思います。
責任の追及ではなく、再発防止のための話し合いが、どこかで始まることを願っています。
この記事が、誰かの「今日の現場」を少しでも安全にするきっかけになれば幸いです。











