北海道が舞台の「信頼回復劇場」- ヤマト運輸と日本郵便、ライドシェアと不祥事の奇妙な符合

ヤマト運輸が先月より、北海道奥尻島で貨客混載型の公共ライドシェア「島のりあい」の実証運行を開始しました。

出典：日本経済新聞「ヤマト運輸が初のライドシェア　北海道奥尻島、専用車で実証開始」 .nikkei.com/article/DGXZQOFC295RU0Z20C25A8000000/

以前、ライドシェアのビジネス参入を検討していた頃、
貨客混載が望ましい
と私は考えていましたが、現在はビジネス参入を断念しています。
その経緯は↓こちら

ライドシェアにビジネスチャンスを見出せなくなってきた～自動運転が普及すれば不毛な予想 ４～

また、ヤマト運輸と競合する日本郵便は、 既に石川県加賀市と北海道上士幌町で、それぞれ異なる形でライドシェアの実証運行を始めた事を↓こちらで綴りました。

タクシー業界が生き残るカギは貨客混載への本格着手か？

従業員がドライバーを担う北海道上士幌町の実証運行が、
同じく北海道の奥尻島でヤマト運輸による実証運行と共通しています。

この他、2社の共通点と言えば、直近の深刻な不祥事です。 以上の共通点から、2社に見え隠れする戦略を考察してみます。

なぜ2社とも北海道なのか - 3つの戦略的意味

1. 同情を誘う「過疎地支援」のストーリー

北海道は日本で最も過疎化と高齢化が進んでいる地域の一つです。特に奥尻島（人口約2,400人）や上士幌町（人口約4,700人）のような自治体では、公共交通の維持が深刻な社会課題となっています。
そのため、企業がこのような地域でライドシェアを展開することで、「社会的弱者を支援する企業」というイメージを効果的に演出できます。

批判されがちな企業の取り組みも、「過疎地支援」という大義名分があれば、メディアや世論の好意的な反応を得やすくなります。

2. 「実験場」としての地理的メリット

北海道の離島や過疎地は、ライドシェア実証実験の「実験場」として理想的な条件を備えています：

3. 本州での本格展開への布石

北海道での先行事例を作ることで、将来の本州展開時に「実績のあるサービス」としてアピールできます。特に過疎化が進む地方都市では、北海道での成功例は説得力のある材料となるでしょう。

ヤマト運輸：不祥事の後始末としての北海道進出

2024年の深刻な問題の数々

ヤマト運輸は2024年、企業存続を揺るがすレベルの問題に直面しました：

奥尻島という「癒しの舞台」

このような状況で選ばれたのが奥尻島でした。1993年の北海道南西沖地震で甚大な被害を受けた奥尻島は、復興のシンボルとしても知られています。 ヤマト運輸がこの島を支援することで、「困難を乗り越える企業」というイメージを重ね合わせることができます。
また、離島という地理的特性により、「静かな環境」で実証実験を進められるメリットもあります。

日本郵便：先手を打った北海道戦略が裏目に

先行したライドシェア参入

日本郵便は2024年10月から上士幌町で、全国初となる郵便車両を活用したライドシェア実証運行を開始しました。これは確かに革新的な取り組みとして注目を集めました。
ちなみに同町では、ライドシェアの他に自動運転のバスやドローンの実証運行も行われています。

2025年に発覚した不祥事

しかし、2025年に入ってから、日本郵便では深刻な問題が明らかになりました： 皮肉なことに、北海道での「先行事例」がメディアで報道される一方で、本州では深刻な不祥事が次々と発覚するという構図になってしまいました。

北海道戦略の共通パターン

両社とも、北海道でのライドシェア事業を「地方創生」「過疎地支援」という文脈で語っています。しかし、これらの美談の背後には、以下のような計算された戦略が見え隠れしていないでしょうか。

本当の問題解決になっているのか

ライドシェア事業への注目が集まる一方で、両社が抱える根本的な問題は解決されているのでしょうか：

まとめ：真の地方創生か、それとも巧妙な演出か

ヤマト運輸と日本郵便の北海道でのライドシェア展開は、確かに地域住民にとって有益なサービスとなる可能性があります。しかし、その背景にある企業の真意を冷静に見極める必要があるでしょう。
両社がそろって北海道を選び、不祥事のタイミングと重なったのは偶然なのか。それとも、計算された「信頼回復戦略」なのか。

地方創生という大義名分に隠れることなく、真摯な企業改革を期待したいと思います。そうでなければ、北海道の住民は単なる「実験台」で終わってしまうかもしれません。